応用物理学会東海支部設立50周年記念DVD発刊に寄せて
応用物理学会東海支部は、1965年に須賀太郎先生を初代支部長として設立されました。現在の東海支部は、愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、および山梨県の企業や大学に所属する応用物理学会の会員の方々で構成されています。この東海地区には、日本の「ものづくり」産業を支えている企業と大学が数多く存在し、活発な生産活動や技術開発、研究開発が行われています。このことを反映して、東海支部の会員数は2,000名を超え、応用物理学会では関西支部に次いで会員数が多い支部となっています。
東海支部では、講演会や研究会、セミナーなどを通した支部会員の研究開発活動の支援を活発に行って来ています。例えば、東海支部の正月行事として恒例となっている「上田記念講演会」も次回で30回目を迎えます。前身の「上田シンポジウム」は、1976年から10回開催されていますので、併せて40年間続いていることになります。「上田シンポジウム」では、物理の根幹に関わる問題について十分な討論、議論を行うことを通して、新しい発見を目指すことに主眼がおかれていました。東海支部の行事となった後も、テーマとしては、目前の応用にあまりとらわれずに、物理の基礎、根幹に関わるような話題、あるいは普段応物の会員にとってあまり馴染みではないが、物理、自然科学として面白い話題などを取り上げ、時間を十分に取って自由に議論を楽しむという考え方は引き継がれています。
また、理科啓発などの社会貢献活動に積極的なことも東海支部の特徴となっています。小中学校の先生や生徒を対象とした「リフレッシュ理科教室」は、1998年から開始され、来年で20回目ということになります。この事業は、小学校、中学校の教員に教育現場で利用できる実験や工作を紹介して現場の理科授業・課外活動に活かして頂くことや、実験工作の体験学習を通して小学校、中学校の生徒に理科や最新の科学技術の面白さに接してもらい、理科に親しむ機会を提供することを目的としています。毎年、浜松、岐阜、甲府、名古屋、津の各会場で実施するとともに、他支部との連携による出張理科教室や遠隔支援型出張リフレッシュ理科教室、他の多くの学協会や団体と連携した「おもしろ科学教室」などの企画としても展開されています。今までに延べ20,000名以上が参加し、各地域でたいへん好評を得ております。これらの、理科工作の中身は、東海支部の担当幹事が毎年工夫して考案したもので、支部の多くの担当幹事やご支援を頂いている団体や企業の支えがあって、20年間続いて来ています。この活動は、2008年の平成19年度科学技術分野文部科学大臣表彰に選ばれ、「リフレッシュ理科教室事業による青少年理科教育の普及啓発」により、「科学技術賞(理解増進部門)」を受賞したことは、支部にとって大きな誇りとなっています。
50年の歴史の中でも、支部顧問の赤﨑 勇先生と支部幹事の天野 浩先生が、「明るくエネルギー消費の少ない白色光源を可能にした高効率な青色LEDの発明」で2014年ノーベル物理学賞を受賞されたことが、東海支部としても最も喜ばしく、また誇らしい出来事でした。基礎研究から実用化に至るまでの研究開発がこの東海地区を中心に行われたことは、応用物理分野で活動しているわれわれにとって大きな励みとなっています。このご受賞を記念して、高校生を対象とした赤崎・天野記念LEDスクールも実施しています。
最近では、応用物理学会に大学院生が主体的に活動を行うスチューデントチャプター(SC)が創設されたことを受け、東海地区では2012年に名古屋大学SCが発足しました。東海支部では、このSCが主催する東海地区学術講演会を積極的に支援すると共に、東海支部学術講演会発表奨励賞を新設して優秀な講演を行った院生会員や若手会員を表彰しています。彼らの中から10年後、20年後の応用物理分野を代表する研究者、技術者が育ってくれることを大いに期待しています。
このような活発な支部活動を通して、大学、企業、公的研究機関の人的なネットワークが広く構築されていることも、東海支部の大きな特徴となっています。この地区で大規模な講演会や国際会議が開催された折には、その組織力や結束力が大いに発揮されてきました。例えば、秋季応用物理学会学術講演会はこれまでにほぼ7年おきに7回開催されてきましたが、いずれも東海支部の会員の方々のご協力によって多くの発表件数や参加者数を得て、運営も含めて大成功をおさめて来ています。
東海支部では、設立50周年記念事業の一環として、この50年間の活動を記録として残すための本記念誌発刊を企画しました。支部活動は、東海支部役員の方々や、多くの支部会員、賛助会員企業をはじめとする多くの企業のご支援があって成り立っています。この場を借りて、東海支部50年の歴史を支えて来て頂いた多くの皆様に厚く御礼を申し上げます。また、今後の東海支部活動を担って頂く方々には、これまでの活動状況を知って頂くと共に、学術的な活動や社会貢献事業に参加することを通して、新たなネットワークを構築し、自身の研究開発の枠を広げると共に応用物理分野の発展に貢献して頂くことを期待しています。
2016年12月吉日
応用物理学会東海支部
設立50周年記念事業委員会
委員長 財満鎭明